万人が繊細な和栗の味を楽しめるモンブラン
店舗紹介
日暮里駅から歩いて10分ほど歩き、谷中銀座の商店街に到着。レトロなムードの商店街の端に至ると、和栗やのマークである栗が目に入ります。
訪れると、いつも順番待ちの列ができているので商店街の中でもちょっと目立つ存在です。
店舗の雰囲気
店内は装飾品は少なく、落ち着いた和風の雰囲気。しかし、店内に花も飾ってあり、”質素”という感じではなく、”シンプル”という印象を受けます。
注意点
人気店過ぎて、必ず順番待ちになります。
店の中で順番待ちはできず、外で待機することになるので、夏場と冬場に行くときは、服装と心の準備をしてから訪問してください。
季節限定の商品の中には、注文されてから調理するものもあり、お店の回転率は他のお店と比較してあまり良くないです。
今回食べたモンブラン - モンブランデセル
総評
1.繊細でありながら万人向け
和栗やのモンブランは「繊細な和栗の味」と「万人が楽しめる甘さ」を見事に両立した珍しいモンブランです。
和栗の味を追求したこだわりの生搾りモンブランを提供してくれるお店は東京にたくさんありますが、和栗の繊細な風味を出しながらも、多くの人が”美味しい”と感じる甘さでバランスを取るのは非常に難しいです。
和栗の味を追求するモンブランは、砂糖の使用を抑えるため、甘さがほとんどなく「栗好きの人だけ」が楽しめるモンブランになることがほとんどです。
逆に、多くの人が食べても美味しく感じるように甘めに作ってしまうと、栗の味が砂糖の味でかき消されてしまうモンブランもあります。
「繊細さ」と「万人が楽しめる甘さ」という2つの相反する要素のバランスが見事で、モンブランを食べたときは、ぞわぞわっと、少し鳥肌が立つレベルで感動しました。
和栗の美味しさを追求するスタイルを貫きながらも、多くの人に歩み寄り、食べてもらおうとする姿勢に、平伏します。。
2.他店のモンブランと比較しながら食べてください
和栗やのモンブランは全体的に繊細な味(味が控え目・薄味)です。
そのため、何も意識しないで食べると「なんとなく美味しかったな・・・」、「モンブランってこういうものなのかな・・」で終わってしまい、食べた充実感を感じることも、余韻も何も残らないと思います。それほど繊細な味です。
そのため、和栗やに行く前に、近所のケーキ屋さんでもコンビニ・スーパーで市販されているものでもよいので、一度別のモンブランを食べて比較基準を作ってから、和栗やのモンブランを食べてください。
和栗やはモンブランペーストの風味が独特で、全体のバランスも良いので、その違いに気づくときっと楽しいはずです。
3.素材の組み合わせを楽しみたい方には物足りないかも
感動的なモンブランでした。これは好みの問題ですが、強いていうなら繊細な味わいであるがゆえに、素材を組み合わせたときの和栗の味の引き立ち具合が、
若干もの足りない。
そもそも、繊細な味が特徴なので的外れな指摘かもしれませんが、モンブランペーストと生クリームを食べた時にそれほど和栗の味が引き立たない感じがします。
もちろん、素材の同士はきちんと調和しているので非常に美味しいのですが、組み合わせを楽しみたい方は若干の物足りなさを感じるかもしれません。
特徴
1.独特の風味を持つ和栗のペースト
一口食べた時に、独特の栗の風味が広がります。いろいろなお店のモンブランを食べるとある程度、栗の風味は似通ってくるのですが、和栗やのモンブランペーストは独特です。
流通している栗を購入するのではなく、自社農園の栗を使用しているため、独自の味が出ているのでしょう。
他の多くのパティスリーは、高級利平栗を使用したり、和栗と洋栗を混ぜたりしたりと、流通している栗を工夫してモンブランを作っているなかで、
そもそもの栗から違うため、完成品のモンブランも全く違う味になっています。
2.繊細でバランスの取れた味わい
モンブランペースト、生クリーム、内側のモンブランクリーム、メレンゲ等、各要素の甘さが抑えられており、それでいて和栗の味がほんのり口に広がります。
各要素の風味や甘さは抑えられているにもかかわらず、甘さや一番上に乗っているモンブランペーストが主役で、他の要素と一緒に食べると和栗の味が邪魔されないように味のバランスが取れています。
甘さ控えめのモンブランだと、特定の要素だけが悪目立ちすることもあるのですが、和栗やは見事なバランスです。
3.栗へのこだわり
自社農園を作っており、栗への情熱は尋常ではありません。
特定の栗農家さんと契約しているパティスリーはありますが、自社で栗の栽培まで手掛ける栗へのこだわりは他のパティスリーとは次元が違うと言わざるを得ません。
栗も含めて農業全体で次世代の担い手が今後さらに不足していくことが課題となっている昨今、
自社で栗農園も経営することは、スイーツを提供してみんなに喜んでもらう以上に、栗産業の維持というレベルまで踏み込んだ意義があると考えます。
モンブランの構造
1.モンブランペースト
独特の栗風味を放つモンブランペースト。甘さもあり、見た目よりも粘性あり。
しかし、後味がずっと続くこともなく、さっぱりしている。
2.生クリーム
それほどホイップされていない状態で液状に近いクリームで、単独ではそれほど甘さは感じない。
クリーム風味も若干感じる程度で、モンブランペーストと組み合わせて食べても栗の味を損なわない。
3.モンブランクリーム
淡い小豆色のクリームが生クリームの下に隠れています。渋皮煮を潰してクリーム状にしたものです。ほんのり甘さと栗の風味を感じます。
一番上のモンブランペーストとは違う味わいです。
モンブランを食べ進めながら、味の変化も楽しむこともできます。
4.メレンゲ
メレンゲはキャラメル等の味付けはなく、シンプルな作り。
レビュー詳細
レビュー項目 | 得点 | レビュー結果 |
---|---|---|
甘み | 3 | モンブランペーストは甘さはほんのり感じる。砂糖の甘さが邪魔をすることなく、栗の甘さを感じる。生クリーム、メレンゲは甘さ控えめ。 |
栗の味の強さ | 3.5 | 繊細な味で、栗の味はそれほど強くない。他のパティスリーでは味わえない独特の栗の風味がこのモンブランの最大の特徴。 |
味のメリハリ | 4 | 全体的に繊細な味なので、メリハリは感じにくいが、繊細な中にも生クリーム、内部のモンブランクリームで味の変化がある。 |
素材の組合せ | 3 | 生クリームとモンブランペーストの組み合わせは美味しい。しかし、それほど素材の組み合わせで味わいが増すというレベルではない。 |
個別要素の味 | 5 | モンブランクリームが繊細。和栗の味がするがほんのり甘い。和栗の味を邪魔しないようになっている。 |
飲み物との相性 | 4 | お茶とのセットでクリームの味をさっぱり流してくれる。組み合わせというより、口直しにピッタリ。 モンブランの味が淡いので、香りが立つほうじ茶よりも煎茶のほうがおすすめ。 |
後味の強さ | 2.5 | 見た目以上に粘性のあるモンブランペーストだが、後味はそれほど強くない。 |
口当たり | 4 | 口当たりは普通のモンブラン。粘性が強く、ペーストは固め。 |
風味の強さ | 3.5 | 栗の風味はしっかり感じる。甘さが抑えられている分、栗の風味をはっきりと感じることができる。 |
見た目の印象 | 4 | 丁寧に、キレイに盛り付けられる。ガラスの容器に盛り付けられ特別感が出ている。 |
店舗・従業員の雰囲気 | 4 | 落ち着いた和風デザイン。店員さんは静かで積極的に話す感じではないが、栗のことになると結構喋る。 |
ボリューム | 3 | 普通の大きさ。 |
お値打ち感 | 3.5 | 1,400円。こだわりのモンブランを食べる値段としては、割安感がある。 |
哲学・店のこだわり | 5 | こだわり抜いたモンブラン。自社農園まで作る栗へのこだわりは、もはや”愛情”や”執着”といった言葉が適切かも。 |